畢生椀

2015.09.17 Thursday

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    「畢生椀」って、ご存知ですか?
    畢生(ひっせい)とは、生まれてから死ぬまで。一生涯。という意味です。
    自分で食事をはじめる幼い頃、ひとの食事はごくわずかな量。器もそれを持つ手も小さなものですよね。
    成長とともに、食べる量も増えすくすくと人が育つのと同じように、
    器も大人になるにつれ次第に大きいものを使うようになります。
    そして、年と共に徐々に少ない量で満足するようになると、器も来た道を戻るように徐々に小さいものに戻していく。
    そんな、それぞれの人生の場面で人に寄り添う器、それが畢生椀です。

    私がはじめて畢生椀を知ったのは、木曽路を旅行していたときのことでした。
    木曽は漆器で有名な地域ですよね。かつての宿場町の様子が残る地域も点在し、そこには漆器の店が数多くありました。
    そのなかの一つのお店で出会いました。




    改めて調べてみたところ、『木曽漆器ちきりや』という創業200年の歴史ある漆器店のものでした。
    この塗は、ちきりや万右衛門七代目のオリジナル技法で
    右が乱根来塗(みだれねごろぬり)、左が乱曙塗(みだれあけぼのぬり)と言うそうです。
    素地は共にケヤキ、乱根来塗は表面が朱色で下から黒漆が顔を出します。乱曙塗はその逆です。

    この器を見るまで、漆と言えば輪島塗のような、澄み渡るように、光沢ある黒漆に金箔文様。
    豪華絢爛なイメージがありました。
    そんな私にとって、この器はまさに新鮮そのもの。
    木地が見える質感の素朴さが好ましく、黒のなかの朱・朱のなかの黒が独特の味わい深さを感じさせます。
    使えば使うほど趣が増す、漆の新しい魅力を知った瞬間でした。

    それまで主に陶器にばかり興味がいっていましたが、この器に出会って、漆器にあらためて興味を持ちました。
    それも実際に日常に使う、使っていい漆器があるということが嬉しく思いました。
    春慶塗のような透けるような飴色の上品な美しさもその後に知りましたし、知っている気になっていた輪島塗にも
    奥深い多様な表現があることを知りました。

    こんな風に、まだまだ自分の知らない、魅力あるものづくりが各地にあるのだろうと思うと、わくわくしますね!
    また旅に出たいな〜と思いつつ、意外に身近なところでも発見はあるものでもあります。
    いいもの探しは楽しみがつきませんね!

    それではまた。




     

    市川孝さんの器

    2015.08.19 Wednesday

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      8月も後半に入り、夏の盛りが過ぎつつある、そんな今日この頃ですね。
      残りわずかなこの夏ですが、皆さん旬の食べ物はもう楽しまれましたか?
      夏に食べたくなる物、枝豆、とうもろこしにかき氷、うなぎにすいか、
      ちょっと考えただけでもいろいろありますよね。
      そんななか無性に、夏と言えばカレー!みたいな気分になるとき、ありませんか?
      年中食べてるんですけどね。でも夏空にカレーって、なんだか気分があがりますよね。
      そんなカレーが食べたくなったとき、活躍するのがこちら!



      市川孝さんという陶芸家の器です。
      もう本当になんの変哲もないカレーが、この器に盛るだけで急に、すごく美味しそうに見えるんですよ!
      多分...3割増しくらい?にはなってそうです(笑)
      それくらい相性抜群なので、もはやカレーといえばこの器です。
      そして、そう思うたびに、あらためて器のちからを感じます。
      料理を盛ったとき、料理がよりおいしく見える。
      使ったときに魅力をより感じられる、ということ。
      当たり前のようで、でもちょっと感動するくらい、すごいことだと思います。

      はじめて市川さんの器に出会ったのは、ざっと10年くらい前です。
      同じく器好きの知人に連れられてはじめて行った「魯山」(西荻窪)でひとめぼれしたのが、市川孝さんのお皿でした。



      写真で見ると、一見地味ですが、さりげない存在感があって、なんとなく「あ、これいいな」
      と惹きつけられる。そんな魅力のある器だと思います。
      こちらはパン皿としてよく使わせてもらっていますが、これまた本当に!ただのトーストを実においいしそうに
      見せてくれるんです。
      最初にご紹介した器もそうなんですが、その焼き色とさらり、ざらりとした質感がとても素敵で
      使えば使うほどいいなあ、と思います。

      そしてそう思うたび、そのものづくりにあこがれのような、尊敬のような気持ちを持ちます。
      使えば使うほどいい。そんなふうに思えるものを作ること。
      それが伝わるのは、きっと、本当に使う人のことを考えているから。
      これを手にした人が、どんなふうに使って、どんなふうに感じて、そのことを思いながらつくる。
      その真摯な姿勢が愛されるものづくりには必要なのだということを、しみじみ感じます。
      そして私もそうありたい、そう思います。


      普段カレーやらトーストやらを食べながら、いつもそんな大層なことを考えているわけではありませんが(笑)
      普段はなんとなく、やっぱりいいな。好きだな。買ってよかった!と思っているこの器。
      今回あらためて、その魅力を言葉にしようと思ったら、こんなふうになりました。
      いいと思うものに触れることの大切さ、それを所有するということ、自分の手元に置き、使うことの愉しさ喜びを
      再確認することとなりました。
      発見することの喜びもまた別にあり、シェアすることも気軽で楽しいですが、その一歩奥へ入っていく。
      その本当の楽しさを忘れないでいたいですよね。


      それではまた!

       

      器 my favorite vol.3

      2015.06.30 Tuesday

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        今回の器は作り手さんのお名前も覚えておりますよ。
        寺村光輔さん。益子の陶芸家のかたの焼き物です。

        益子の陶器市によく出かけるのですが、たしか初めて行ったときにこの器に出会いました。
        うまくこの写真でお伝えできているかわかりませんが、やわらかいうす黄色の、さらりとした肌触りのうつわです。
        日々ごはん茶碗として愛用しています。
        それまでこういった色合いのもに魅かれることはあまりありませんでしたが、このときは一瞬でコレいい!
        って思った記憶があり、一気に三個購入してしまいした。(かたちが少しずつ違うのです)
        本当にテンションあがった感じで、それから陶器市自体にもはまったんですよね。

        それこそ山のようにある器のなかで、これだ!と思うものに出会えたときは本当にうれしいものです。
        逆になんだかいまいちピンとこず延々とさまようこともありますが。
        自分はこういうのが好きだ!と思っているところを覆される好きなものが出現する、この発見が楽しい。
        そうして手に入れたうつわでごはんを食べるといつもに増しておいしく感じるんですよね。
        皆さんはどんなマイごはん茶碗をお持ちですか?
        ちょっとのぞいてみたいですね!
         

        器 my favorite vol.2

        2015.06.29 Monday

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          好きなものを集めると、あらためて自分の好きなものがわかる。
          そんなふうに思うことはありませんか?
          現代流に言うならば「お気に入り」というやつです。
          そこにあるものは意識・無意識の程度の差こそあれ、自分が選んだからこそ、そこにあるわけです。
          そうして自分フィルターを通して集まってきたものには、きっと何らかの共通点があるのだと思います。
          たとえば一番わかりやすいのは色かもしれませんし、○○柄が好き!とかいうこともあるでしょう。
          でも、もっとわかりにくい、些細な何かが決め手になっていることもあるかもしれません。
          それにふと気付くとき、それはちょっとした発見ですよね。

          私は「いい」と思う器は、自分でお金を出して、出来るだけ買いたいと思っています。
          いいもの、美しいものを見る目を養うには、多くを見ること、そしてちょっと背伸びしてでも実際に買い求めること。
          失敗したとしても、それによって身にしみて「知る」ことができると思うのです。
          今のところ骨董にはそれほど興味があるわけではないのですが、
          骨董の目利きについて、白洲正子さんがよくその随筆でそんなふうに語られてました。
          買ってはじめて美しいものがわかる。買わずして知識だけの頭でっかちになってどうする、と。
          ご自身の失敗談をも笑いながら語りつつ、でもそれによって見る目を培っていったのだと。そんな自負をお持ち
          だったのではないかと思います。
          こんな風に言うと何だかとっても無理して頑張っているかのようですが、たくさん見て、自分で選ぶ。ただそれだけ。
          とても楽しいことです。審美眼なんていうと腰が引けちゃいますけど、そんな大げさなことではなく、
          自分が好きなものを知る、選び取る、自分なりのそのセンスを磨いていくことなのだと思います。
          そしてそれは、自分の懐を痛めずしては決して得られないもののように感じるのです。

          器は美術品などと違って、実際に使えるということが何と言ってもいいですよね。
          そしてこれは器に限ったことではなく、たとえば文房具や雑貨、衣服だって同じことがいえるのではないでしょうか。

          何故それが好きなのか、はじめはわからなくても、いつかそれが積み重なって、わかるときが来る。
          歳の分だけ「好きなもの」が蓄えられていけば、きっと誰もがある種のマスターになれるのではないでしょうか。
          そんなふうになっていけたら楽しいですよね。


          そんなわけで?今日の器はこちら。



          どこの何という焼き物だったか、残念ながらすっかり忘れてしまったのですが、
          このやさしい色合いと、ふっくら柔らかなまるみに心魅かれたことは間違いないですね。
          ちゃんと紹介できずに申し訳ない...窯元さん。印だけでもご紹介を。




          次回はちゃんと作り手のわかる器から、ご紹介することにしましょう。

           

          器 my favorite vol.1

          2015.06.20 Saturday

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            この植木鉢、10年前くらいに購入した「ヨーガンレール」の器です。
            ココナッツの実から型をとって作られた陶器シリーズ。
            もともと、これでカフェオレ飲んだらおいしそうだな〜と思って購入したのですが...
            熱い。熱いんです。器の生地が薄く、取っ手もない形なので、ホットドリンクをいれると持てないくらい
            熱くなります。ちょっとがっかりしつつ、上品に少量を楽しむものかなと思いつつ、次第に出番が
            減っていってしまいました。そこで、あるとき思い切って緑を植えてみようと思いつきました。
            ちょっと鉢植えにするには贅沢かなとも思いましたが、あんまり使わないのももったいないし、
            鉢植えにすればずっと表に出てますからね。楽しむ時間も増えます。
            そんなわけで今ではすっかり馴染んで、もともと植木鉢だったのではと思うほどです。
            器と料理を組み合わせるように、この器にはどんな植物が似合うかなと思い巡らせるのも楽しい。
            皆さんも、もしお蔵入りしている器があるときは、思いきって自由に新たな使い方を見つけてみてはいかがでしょう?
             
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